「初級者が出会いやすいモンスターを!」とのリクエストをいただきましたので、そうしましょう。
しかし、DMやる人にとってはベーシックルールのDM用を見ればいいだけなので、ここはプレイヤー向けに少し工夫して書いていきましょう。
と決めたものの、どうするか。
……よし、アイツの再登場だ。
……
ダンジョン探索に向かうことになった冒険者たちは準備の為、装備を扱う店を訪れた。
店先にあるベンチには爺さんが一人腰掛けている。
爺さんは店に入ろうとする冒険者たちに声をかけた。
「おや、駆け出しの冒険者さんたちかな?」
突然の事に少々面食らってしまい返答できずにいると、爺さんは話の続きを始めた。
「ワシはこの店の隠居のレイモンド。お前さん方、わしの話を聞いて行かんか?少しは役に立つと思うぞ。」
「安心せい、わしの話をちゃんと聞いてくれたら、店の物を少し値引きするよう息子に言ってやる。」
爺さんはすこぶる楽しそうな様子だ。
金銭に余裕のない若い冒険者たちには値引きしてくれることが何よりもありがたい、そう判断し、爺さんの話に耳を傾けることにした。
「わしも若い頃は冒険者でな、それはそれは……」
どうやら話には前置きがあるようだ。
美しい姫様と恋に落ちたとか、ドワーフの鍛冶屋の技を盗んで店を始めただとか、とても為になるような話ではないようなことを喋っている爺さんに呆れそうになった、その時、
「お前さん方は、これからダンジョンに入ろうとしているんじゃろ?」
爺さんは、聞いてきた。
そりゃこの店に来るのはその準備に他ならないと返答した。
「ならば、そういった場所に棲んでる怪物どもの話を聞きたくないかね?」
爺さんの顔がさっきよりも真剣な風にも見えた。
これから出会うであろう怪物の情報が少しでも得られるのであれば危険の回避にもつながる。
当然のように冒険者たちは首を縦に振った。
「では、まず手始めにヒューマノイドと呼ばれる人間の形をした化け物について話そう。
ダンジョンの比較的浅いところに棲んでいるヒューマノイドは大概小さめの奴らじゃな。
いろんな種類のヒューマノイドがいる中で奴らは、臆病で、愚かで、そして弱い部類じゃろう。」
冒険者たちは聞き耳を立てるかのごとく爺さんの話しに集中し始めた。
「小型のヒューマノイドも見た目などでいくつかに分けられているんじゃが、お前さん方も耳にしたことがあるじゃろう、『ゴブリン』という名を。奴らは灰色の肌に赤い瞳、そしてその顔は何とも醜悪じゃ。体は大きくはないが人並みの腕力をもっておるので舐めてかかってはいかん。そして奴らは暗いダンジョンの中でも明かり無しに物を見ることが出来る。消えた松明を点ける間にいつのまにか囲まれているということもあったからな。また時々ではあるが奴らは狼を飼っていることもある。これも一緒になって襲ってくることがあるから用心することじゃな。」
「次は『コボルド』という連中じゃ。 こやつらはゴブリン共よりも細身で犬のような顔をしておる。土色のウロコのような肌をで、やはり暗闇でも見ることができるがゴブリンよりも若干弱かったように記憶しておる。」
「他には『オーク』というのもおったな。豚というか猪というかなんかの動物と人間とが合成したような奴らじゃ。こやつらは大概悪い魔法使いやオークよりも強い怪物に仕えておる。そして時としてやつらの中に大型のヒューマノイドが混じっておることがある。オーク自体はゴブリン共とさほど強さは変わらんが、こういった連中が混じっておると非常に厄介じゃ。もし、オークに遭遇したら注意深く観察することじゃ。駆け出しのお前さん方では手に負えない場合もある、逃げることも手じゃぞ。」
「ゴブリン似よく似た怪物に『ホブゴブリン』というのがおる。こやつらのねぐらは地下の洞窟や裂け目なんだが、狩りの為地上に再々現れるのじゃ。体格も知性もゴブリンよりも優れておる、当然悪知恵も働かせてくるので少々厄介じゃったな。」
「ここまで話した連中の共通の特徴は武器を持って攻撃してくるということ。そして連中の群れにはリーダーや王といった者がおって、その有無で士気が変わる。リーダーや王が戦いで死んでしまうことがあればきっと蜘蛛の子を散らすように逃げていくじゃろう。また、ピカピカ光るものを集めるのも共通の習性じゃな。やつらはねぐらのどこかにそういったものを隠し持っておる。もしそういった場所に行ったならば、よく探してみることじゃ。」
「あとは『ノーム』というドワーフに良く似た小さめのヒューマノイドに会うことがあるかもしれん。彼らは我々人間を害する心は持っておらんので、もし遭遇したならば話し合う余地があるじゃろう。そして彼らは金や宝石を何よりも愛しておる。そういったものを十分に与えられれば、こちらに協力してくれることもあるじゃろうな。」
「人間より大きなヒューマノイドはここで話しても意味がなかろう。それよりも真っ先に逃げた方が良い。やつらは強い。駆け出しの冒険者にどうこうできるもんじゃないからのう。まずは命を大事にすることを覚えるのじゃ。」
爺さんの口ぶりが話し始めより滑らかになっている気がする。
「当然、洞窟のようなダンジョンには野生生物が棲み着いていることもある。大抵の生き物は人が来ると逃げてしまうもんじゃが、中にはこちらを餌だと思うようなやつらもおる。」
「洞窟であればよくいるのが『吸血コウモリ』じゃな。それから『蛇』や『大ねずみ』や『狼』や『熊』の類もねぐらとしておる場合がある。特に熊の場合、洞窟が広く、十分な高さがある場合ドデカい熊がおることもあるので注意することじゃ。動物に詳しい者がおれば、その糞などでどんな野生動物がおるのか判断できるらしいが、わしは気にせず全部倒してしまったわい。」
「もちろん虫の類もおるぞ。中でも面倒なの『キャリオンクローラー』というデカい芋虫じゃな。こやつは長い8本の触手でこっちを触りに来る。これがとんでもなく厄介でこれに触られると体が麻痺してしまうのじゃ。痺れている時間はそう長くはないものの、こやつの恐ろしいところは麻痺した獲物をそのまま食い始めるところじゃ。つまり痺れているところに食いつかれて、もしゃもしゃ食われ始めたところで痺れから開放されることも考えられるわけじゃな。考えたくないが。攻撃そのものは大したことはないが耐久力が高いから、始めのうちはデカい芋虫を見たら逃げる方がいい。」
「それから『蜘蛛の仲間』もよく見かけたな。こいつらはほぼ確実に毒を持っておるから、用心に越したことはない。特に黒くて背中に赤い砂時計のような模様のある蜘蛛は恐ろしい毒を持っておるらしいが、わしは全部倒してしまったから良くわからんのじゃ。もし、これらの蜘蛛の巣に絡まってしまったらすぐに火で焼いてしまったほうがいい。グズグズしていると文字通り餌食じゃ。」
「あとは巨大なコガネムシの類も時々見た。『ファイヤービートル』という光るやつや、酸のような油を吹きかけてくる『オイルビートル』、それから大きな強いアゴを持った『タイガービートル』なんかがおったはずじゃ。こやつらは普段は自分たちで穴を掘って巣にしておるんじゃが、何かの拍子にダンジョンに迷い込むんじゃろうな。」
「それから洞窟にはこれまた『大きなハチ』の巣があることもある。やつらは巣の中にいる女王バチを守るために命を賭して向かってくる。お尻にある毒針でそれも集団で襲ってくるからある程度の手錬の冒険者であっても手ごわい相手じゃろうな。そうして手に入れた蜂の巣は持ち帰ることが出来ればいい金になるぞ、覚えておくといい。」
「また、このハチを主食にしておる『ロバーフライ』という目を疑うほどのデカさの羽虫がおる。これはまぁ、そんなにこっちを襲ってくることはないんじゃが、こういう虫たちを餌にしておるのが先ほど話した蜘蛛共ということになるのかのう。そして虫どもの共通の特徴はさほど財宝を抱えておらんことじゃな。全くないわけではない、虫によっては収集癖がある奴もいるし、虫そのものがソコソコ高値で売れる奴もおらんことはない。」
爺さんの話しぶりが熱を帯びてきた。これからが本番といわんばかりである。
「ダンジョンのなかには屋外ではあまり見ることがない怪物たちも数多くおる。巨大なアルマジロのような姿に2本の触毛をもった『ラストモンスター』というやつがおってな、こいつは人や動物を餌にしているわけではないのに襲ってくることがある。なぜだかわかるか?ふふん、教えてやろう。こやつは金属の錆を食うのじゃ。そして触毛は金属を腐食する能力をもっている。つまり目的はこっちの鎧や剣といった装備なのじゃ。わしとしては売り上げが上がるのでドンドン錆びさせてもらいたいぐらいじゃがな。洞窟の中で死んだ冒険者の装備を掃除して回るというのが本来の習性のようじゃが、出費が痛かろうと思うので、運悪く出会ってしまったら逃げた方がいいかものう。」
「同じ掃除屋のモンスターとして『グリーンスライム』とそれに良く似た怪物もおる。グリーンスライムは文字通り緑色のブヨブヨした煮凝りのようなやつで、天井から不意に落ちてくることがある。これに素肌が触れると触れた箇所が緑色のスライム状に変わってしまいどんどん食われていってしまう。たとえ服や鎧を着ていてもしばらく経つとその服や鎧も溶けてしまうのじゃ。この類の怪物は武器での攻撃が効かない場合が多い。グリーンスライムの場合は火で焼くことで攻撃が出来る。黄土色のゼリーのような『オーカーゼリー』という奴には冷気でしか損傷を与えられない。地を這う灰色の泥のような『グレイウーズ』という怪物は逆に火と冷気が効かず、武器による攻撃と電撃が有効じゃ。これらの中で最も巨大なのが『ゼラチンキューブ』というやつじゃ。縦横奥行き10フィートもあろうかというこやつは生きてようが死んでようが自分の通り道にある生物を溶かして取り込んでしまうのじゃ。金属は溶かせないようなのでこやつを倒した後、運悪く死んでしまった先行者の所持品や金貨なんかが足元に落ちているかもな。おっと忘れておった、ゼラチンキューブには火と武器の攻撃が有効じゃったと思うぞ。」
「さて話が長くなりそうじゃのう。店の中に入って茶でも飲みながら話の続きをするとしようか。」
爺さんは、そういうと冒険者たちを店の中に招き入れた。
使用人が人数分の茶を運んで来、爺さんは店の隅に置かれたテーブルに着いて一息入れている。
冒険者たちは長くなるのか、と思いつつ茶に付き合うことにした。続きを読む
しかし、DMやる人にとってはベーシックルールのDM用を見ればいいだけなので、ここはプレイヤー向けに少し工夫して書いていきましょう。
と決めたものの、どうするか。
……よし、アイツの再登場だ。
……
ダンジョン探索に向かうことになった冒険者たちは準備の為、装備を扱う店を訪れた。
店先にあるベンチには爺さんが一人腰掛けている。
爺さんは店に入ろうとする冒険者たちに声をかけた。
「おや、駆け出しの冒険者さんたちかな?」
突然の事に少々面食らってしまい返答できずにいると、爺さんは話の続きを始めた。
「ワシはこの店の隠居のレイモンド。お前さん方、わしの話を聞いて行かんか?少しは役に立つと思うぞ。」
「安心せい、わしの話をちゃんと聞いてくれたら、店の物を少し値引きするよう息子に言ってやる。」
爺さんはすこぶる楽しそうな様子だ。
金銭に余裕のない若い冒険者たちには値引きしてくれることが何よりもありがたい、そう判断し、爺さんの話に耳を傾けることにした。
「わしも若い頃は冒険者でな、それはそれは……」
どうやら話には前置きがあるようだ。
美しい姫様と恋に落ちたとか、ドワーフの鍛冶屋の技を盗んで店を始めただとか、とても為になるような話ではないようなことを喋っている爺さんに呆れそうになった、その時、
「お前さん方は、これからダンジョンに入ろうとしているんじゃろ?」
爺さんは、聞いてきた。
そりゃこの店に来るのはその準備に他ならないと返答した。
「ならば、そういった場所に棲んでる怪物どもの話を聞きたくないかね?」
爺さんの顔がさっきよりも真剣な風にも見えた。
これから出会うであろう怪物の情報が少しでも得られるのであれば危険の回避にもつながる。
当然のように冒険者たちは首を縦に振った。
「では、まず手始めにヒューマノイドと呼ばれる人間の形をした化け物について話そう。
ダンジョンの比較的浅いところに棲んでいるヒューマノイドは大概小さめの奴らじゃな。
いろんな種類のヒューマノイドがいる中で奴らは、臆病で、愚かで、そして弱い部類じゃろう。」
冒険者たちは聞き耳を立てるかのごとく爺さんの話しに集中し始めた。
「小型のヒューマノイドも見た目などでいくつかに分けられているんじゃが、お前さん方も耳にしたことがあるじゃろう、『ゴブリン』という名を。奴らは灰色の肌に赤い瞳、そしてその顔は何とも醜悪じゃ。体は大きくはないが人並みの腕力をもっておるので舐めてかかってはいかん。そして奴らは暗いダンジョンの中でも明かり無しに物を見ることが出来る。消えた松明を点ける間にいつのまにか囲まれているということもあったからな。また時々ではあるが奴らは狼を飼っていることもある。これも一緒になって襲ってくることがあるから用心することじゃな。」
「次は『コボルド』という連中じゃ。 こやつらはゴブリン共よりも細身で犬のような顔をしておる。土色のウロコのような肌をで、やはり暗闇でも見ることができるがゴブリンよりも若干弱かったように記憶しておる。」
「他には『オーク』というのもおったな。豚というか猪というかなんかの動物と人間とが合成したような奴らじゃ。こやつらは大概悪い魔法使いやオークよりも強い怪物に仕えておる。そして時としてやつらの中に大型のヒューマノイドが混じっておることがある。オーク自体はゴブリン共とさほど強さは変わらんが、こういった連中が混じっておると非常に厄介じゃ。もし、オークに遭遇したら注意深く観察することじゃ。駆け出しのお前さん方では手に負えない場合もある、逃げることも手じゃぞ。」
「ゴブリン似よく似た怪物に『ホブゴブリン』というのがおる。こやつらのねぐらは地下の洞窟や裂け目なんだが、狩りの為地上に再々現れるのじゃ。体格も知性もゴブリンよりも優れておる、当然悪知恵も働かせてくるので少々厄介じゃったな。」
「ここまで話した連中の共通の特徴は武器を持って攻撃してくるということ。そして連中の群れにはリーダーや王といった者がおって、その有無で士気が変わる。リーダーや王が戦いで死んでしまうことがあればきっと蜘蛛の子を散らすように逃げていくじゃろう。また、ピカピカ光るものを集めるのも共通の習性じゃな。やつらはねぐらのどこかにそういったものを隠し持っておる。もしそういった場所に行ったならば、よく探してみることじゃ。」
「あとは『ノーム』というドワーフに良く似た小さめのヒューマノイドに会うことがあるかもしれん。彼らは我々人間を害する心は持っておらんので、もし遭遇したならば話し合う余地があるじゃろう。そして彼らは金や宝石を何よりも愛しておる。そういったものを十分に与えられれば、こちらに協力してくれることもあるじゃろうな。」
「人間より大きなヒューマノイドはここで話しても意味がなかろう。それよりも真っ先に逃げた方が良い。やつらは強い。駆け出しの冒険者にどうこうできるもんじゃないからのう。まずは命を大事にすることを覚えるのじゃ。」
爺さんの口ぶりが話し始めより滑らかになっている気がする。
「当然、洞窟のようなダンジョンには野生生物が棲み着いていることもある。大抵の生き物は人が来ると逃げてしまうもんじゃが、中にはこちらを餌だと思うようなやつらもおる。」
「洞窟であればよくいるのが『吸血コウモリ』じゃな。それから『蛇』や『大ねずみ』や『狼』や『熊』の類もねぐらとしておる場合がある。特に熊の場合、洞窟が広く、十分な高さがある場合ドデカい熊がおることもあるので注意することじゃ。動物に詳しい者がおれば、その糞などでどんな野生動物がおるのか判断できるらしいが、わしは気にせず全部倒してしまったわい。」
「もちろん虫の類もおるぞ。中でも面倒なの『キャリオンクローラー』というデカい芋虫じゃな。こやつは長い8本の触手でこっちを触りに来る。これがとんでもなく厄介でこれに触られると体が麻痺してしまうのじゃ。痺れている時間はそう長くはないものの、こやつの恐ろしいところは麻痺した獲物をそのまま食い始めるところじゃ。つまり痺れているところに食いつかれて、もしゃもしゃ食われ始めたところで痺れから開放されることも考えられるわけじゃな。考えたくないが。攻撃そのものは大したことはないが耐久力が高いから、始めのうちはデカい芋虫を見たら逃げる方がいい。」
「それから『蜘蛛の仲間』もよく見かけたな。こいつらはほぼ確実に毒を持っておるから、用心に越したことはない。特に黒くて背中に赤い砂時計のような模様のある蜘蛛は恐ろしい毒を持っておるらしいが、わしは全部倒してしまったから良くわからんのじゃ。もし、これらの蜘蛛の巣に絡まってしまったらすぐに火で焼いてしまったほうがいい。グズグズしていると文字通り餌食じゃ。」
「あとは巨大なコガネムシの類も時々見た。『ファイヤービートル』という光るやつや、酸のような油を吹きかけてくる『オイルビートル』、それから大きな強いアゴを持った『タイガービートル』なんかがおったはずじゃ。こやつらは普段は自分たちで穴を掘って巣にしておるんじゃが、何かの拍子にダンジョンに迷い込むんじゃろうな。」
「それから洞窟にはこれまた『大きなハチ』の巣があることもある。やつらは巣の中にいる女王バチを守るために命を賭して向かってくる。お尻にある毒針でそれも集団で襲ってくるからある程度の手錬の冒険者であっても手ごわい相手じゃろうな。そうして手に入れた蜂の巣は持ち帰ることが出来ればいい金になるぞ、覚えておくといい。」
「また、このハチを主食にしておる『ロバーフライ』という目を疑うほどのデカさの羽虫がおる。これはまぁ、そんなにこっちを襲ってくることはないんじゃが、こういう虫たちを餌にしておるのが先ほど話した蜘蛛共ということになるのかのう。そして虫どもの共通の特徴はさほど財宝を抱えておらんことじゃな。全くないわけではない、虫によっては収集癖がある奴もいるし、虫そのものがソコソコ高値で売れる奴もおらんことはない。」
爺さんの話しぶりが熱を帯びてきた。これからが本番といわんばかりである。
「ダンジョンのなかには屋外ではあまり見ることがない怪物たちも数多くおる。巨大なアルマジロのような姿に2本の触毛をもった『ラストモンスター』というやつがおってな、こいつは人や動物を餌にしているわけではないのに襲ってくることがある。なぜだかわかるか?ふふん、教えてやろう。こやつは金属の錆を食うのじゃ。そして触毛は金属を腐食する能力をもっている。つまり目的はこっちの鎧や剣といった装備なのじゃ。わしとしては売り上げが上がるのでドンドン錆びさせてもらいたいぐらいじゃがな。洞窟の中で死んだ冒険者の装備を掃除して回るというのが本来の習性のようじゃが、出費が痛かろうと思うので、運悪く出会ってしまったら逃げた方がいいかものう。」
「同じ掃除屋のモンスターとして『グリーンスライム』とそれに良く似た怪物もおる。グリーンスライムは文字通り緑色のブヨブヨした煮凝りのようなやつで、天井から不意に落ちてくることがある。これに素肌が触れると触れた箇所が緑色のスライム状に変わってしまいどんどん食われていってしまう。たとえ服や鎧を着ていてもしばらく経つとその服や鎧も溶けてしまうのじゃ。この類の怪物は武器での攻撃が効かない場合が多い。グリーンスライムの場合は火で焼くことで攻撃が出来る。黄土色のゼリーのような『オーカーゼリー』という奴には冷気でしか損傷を与えられない。地を這う灰色の泥のような『グレイウーズ』という怪物は逆に火と冷気が効かず、武器による攻撃と電撃が有効じゃ。これらの中で最も巨大なのが『ゼラチンキューブ』というやつじゃ。縦横奥行き10フィートもあろうかというこやつは生きてようが死んでようが自分の通り道にある生物を溶かして取り込んでしまうのじゃ。金属は溶かせないようなのでこやつを倒した後、運悪く死んでしまった先行者の所持品や金貨なんかが足元に落ちているかもな。おっと忘れておった、ゼラチンキューブには火と武器の攻撃が有効じゃったと思うぞ。」
「さて話が長くなりそうじゃのう。店の中に入って茶でも飲みながら話の続きをするとしようか。」
爺さんは、そういうと冒険者たちを店の中に招き入れた。
使用人が人数分の茶を運んで来、爺さんは店の隅に置かれたテーブルに着いて一息入れている。
冒険者たちは長くなるのか、と思いつつ茶に付き合うことにした。続きを読む